その21 伝統的包装素材「わら」の魅力
包装に用いられる素材への探究。今回は、「わら」の魅力について考えてみる。 わらは稲や麦などの茎を乾かしたものである。 モノを包むということの始まりは、手近な材料を利用することであったとすれば、このわらこそ、人々が作り出した最初の素材なのではないだろうかと推察できる。 わらは強い繊維を持っており、柔軟で弾力にも富んでいる。さらに扱いやすさが加わって、壊れやすいモノを包むのに適した素材なのである。
包むモノを守り運搬することから、包み方の知恵が育まれていく。代表的なのが、卵や納豆の苞(づと)である。生活の実用としての必要からつつまれたモノが、見事な造形美を醸し出す姿は、感嘆に値する。 わら苞は、農民の生活の知恵として生れた包装素材の典型である。伝統的パッケージでの象徴的な存在ともいえるのではないだろうか。 卵の苞は、地方によって様々である。わらの使い方が色々で、卵が縦に包まれたり横に包まれたりする。しかし、わら苞に包まれた卵は、新鮮さが直接伝わってくるから不思議である。外国人の目には、特にこのわら苞の造形が日本らしさを表現するものとして、強烈な印象を持つといわれている。 魚にもこのわらが使われていた。日本海で漁れる寒ぶりの巻鰤だ。塩水に漬けた後、陰干にする保存用の干物である。半年もの保存ができるので必要な分量だけのわらをほどいていくのである。最近では巻き付けるわらが手に入りにくいという。生活の身のまわりの材料が無視されていく時代なのである。先人たちの豊かな知恵が生んだこうした天然素材を見直すべきだと考える。確かに衛生面での安全な使い方の研究が前提であり、法的規制もある。だからといって、いとも簡単に捨て去るには、あまりにも知恵を無視することにならないだろうか。 経済性や便利性の追求が生んだ合成素材は、合理的ではある。しかし、日本人がわらに対して抱く、優しさの感性までも失っていいのだろうか。 心のゆとりを喪失したのは、こうした自然素材とのかかわりが少なくなったことと無縁ではないと考える。包装素材にかける思い入れが大切だ。
|